SGF DYEING PROJECTS
半年ほど遡ることになるのだが
染め職人H氏がお客さんとしてアトリエにふらり訪れてくれた。
(有名ブランドの染色もおこなっているので名を伏せることにする)
私からはデニムのことを話し、氏からは染めについて教えてもらう。
デニム分野と染色分野。
クロスオーバーする部分も多い。
そんなことを繰り返すうちに自然発生的に染めをお願いするようになった。
染色について色々と調べてみる。
「染色(せんしょく)とは、布、革など繊維質に色素を吸着、結合させることである」
擦り込み(植物を直接こすって色を付ける)と泥漬け(泥につけ染める)のような原始的な染色は数千年前からすでに行われていたらしい。
本格的な浸染に関しては日本では3世紀〜4世紀頃、中国大陸から衣料品として植物が日本に入ってきたときから盛んに行われるようになったようだ。
そんな歴史の中にも非常に興味深い話がある。
それは欧州での出来事。
1856年の合成染料(モーブ)の発見である。
天然ではなく、容易に作れる合成染料の発見によって、染色の大量生産が可能になるのだ。
ある資料には
「個人の時代から染色の時代に変わった」と表現されている。
個人の時代には
マイスター(染め職人)という職業が確立されており、
マイスターは自分が保有する染色方法を秘密にし、自分の子息やマイスター資格を得た特定の人物に秘法を与えたという。
まさに人から人に伝わっていく秘法。
そんな歴史を知るにつれて「染め」ということを見つめなおしたいという気持ちになる。
そして、氏との染めのプロジェクトが始まった。
「大量生産で作られる染めではなく、個人の時代のような手仕事を大事にした染めであること」
「商売ベースではなく、今まで見たことのない染めであること」
そして
「お互いに楽しみながらの染めであること」
そんな気持ちの中、このプロジェクトはスタートした。